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コピペ実装から抜け出す:『これからのJavaScriptの教科書』で身につける現代の書き方
JavaScriptの解説は読める。でもいざゼロから書こうとすると手が止まる。「動いているコードをコピペして使っているが、エラーが出ると対処できない」「なぜその書き方なのかが分からないまま使っている」——そういう段階で詰まっている人は多い。
狩野祐東・狩野さやかによる『これからのJavaScriptの教科書』(SBクリエイティブ、2024年)は、その段階から「考えてコードを組み立てられる」状態に移行することを目標に据えた一冊だ。
1. 「なぜそう書くのか」を都度説明する構成
本書の特徴の一つは、専門用語が登場するたびに意味と定義をその場で解説している点だ。多くの技術書では用語が説明なしに登場し、読者がそのたびに別の情報源を調べなければならない。その中断が積み重なると学習の流れが途切れる。
各サンプルコードには注目すべき箇所を示すカラーハイライトとコメントが付いており、コードを読む際の迷いを減らしている。「どのコードが何をしているのか」ではなく「なぜその処理が必要なのか」という問いへの答えが示されているため、動きを真似ることに終わらず、仕組みを理解しながら読み進められる構成になっている。
全359個のサンプルコードはコンパクトにまとめられており、Chromeの開発者ツールを使ってその場で動作を確認できる。ダークモード・ライトモードの切り替えのような、実務サイトで実際に見かける実装例も収録されている。
2. ES2023までのモダン記法に絞った内容
本書はES2015以降に導入されたモダンな構文を基準として書かれている。アロー関数、スプレッド構文、分割代入、PromiseとFetch APIによる非同期処理、Map/Setなどの高度なデータ構造が、古い記法と混在せずに説明されている。
現在の開発現場では、jQueryが主流だった時代の書き方と、ES2015以降の標準的な書き方が混在しているケースが多い。以前にJavaScriptを触ったことがあるが、現在の書き方に整理できていないという状況は珍しくない。本書はES2023を基準として構成されているため、手元に残っている古い知識を上書きしながら整理する使い方にも適している。
配列操作、正規表現、DOM操作などについては詳細なメソッド一覧表が随所に配置されており、学習後も逆引き辞書として手元に置いて使えるよう設計されている。ただし電子書籍版は固定レイアウト型のため文字列検索が使えない点は注意が必要で、逆引き利用を想定するなら紙版が向いている。
3. ブラウザ操作の先、Node.jsとViteまでカバーする
本書の後半では、Node.jsのインストールやパッケージ管理、Viteを使ったローカル開発環境の構築までを扱っている。ブラウザ上でスクリプトを動かすことと、モジュールを使ったプロジェクト構成でアプリを開発することは、環境として大きく異なる。その橋渡しになる部分まで一冊で完結する。
ReactやVue.jsといったUIフレームワークを学ぶ前段として、JavaScriptそのものの理解を固めておく必要がある。本書でNode.jsとViteによる環境構築の感覚をつかんでおくことで、フレームワーク学習に入ったときに環境周りで詰まるリスクが減る。
flowchart LR
JS["JavaScript\n(本書で基礎固め)"] --> ENV["環境構築\nNode.js + Vite"]
ENV --> FW["フレームワーク学習\nReact / Vue.js"]
JS --> DOM["DOM操作・非同期処理\n(ブラウザ直接)"]
style JS fill:#e8f4fd,stroke:#4a9eda
style ENV fill:#e8f8e8,stroke:#4caf50
style FW fill:#f3e5f5,stroke:#9c27b0
style DOM fill:#fff8e1,stroke:#f5a623
1章から読み始めてステップバイステップで学ぶ使い方が主に想定されているが、中盤以降はモジュール化、クロージャ、高度な非同期処理などの中級テーマに移行するため、プログラミングの経験がまったくない状態からの入門には少し段差がある。HTMLとCSSのコーディングができる状態、あるいは他言語での開発経験がある状態からのスタートで力を発揮する一冊だ。
4. どんな詰まりに効くか
「解説は追えるのに、いざ白紙から書こうとすると最初の一行が出てこない」——HTMLとCSSでページは組めても、動きをつける段になるとネット上のコードを貼り替えるしかない。この詰まり方をしているWeb制作者に、本書はDOM操作(第12章)やフォーム操作(第13章)を動作原理から示す。読み終えると、既存コードの改変やエラーの切り分けを自分の判断で進められるようになる。
もう一つは、以前JavaScriptやjQueryを触ったが今の書き方に更新できていない状況だ。アロー関数やPromiseを古い記法と混ぜたまま使っている人が、ES2023を基準に手元の知識を差し替える使い方にも向く。
5. 向いている人と、まだ早い人
向いている人
- HTMLとCSSでページは組めるが、JavaScriptになるとコピペの改変から抜け出せないWeb制作者
- 他言語や旧世代JavaScriptの経験があり、モダンな記法・非同期処理・環境構築を一度に整理し直したい人
向いていない人
- プログラミング自体が初めての人。1章は入門的だが、中盤からモジュール化・クロージャ・高度な非同期処理へと段差が上がるため、『独習JavaScript 新版』のような基礎書を先に通す方が無理がない
- すでにモダンJavaScriptを実務で書けていて、非同期や環境構築に不安がない人。本書の主眼はその土台を固め直すことにあるためだ
6. 「順に写せば身につく」わけではない
「教科書」と付くと、順にサンプルを写していけば自然に書けるようになる、と受け取りがちだ。だが読者の声には、手順どおりに写すだけでは効果が薄いという指摘がある。写経で得られるのは「読める」までで、白紙から組み立てる力には直結しない。
本書が求めるのは受け取る学習ではなく、各サンプルで「この処理とあの処理を組み合わせると何ができるか」を自分で考える手だ。理解を実装力へ変える訓練として使うと、同じ359個のサンプルでも身につき方が変わる。
7. 読み終えた後に進む先
モダンな記法と環境構築の土台ができたら、次は実務寄りの応用へ足を進めたい。DevBookPath は本書の次に『ステップアップJavaScript』を接続している。非同期・モジュール・設計といった「教科書の次に必要になること」を扱う本で、身につけた文法を現場で使う力へ橋渡しする。ReactやVue.jsのフレームワーク学習を急ぐ前にこの一段を挟むと、環境周りでつまずきにくい。
実務での最初の一歩は、本書のサンプルを写すだけで終えず、章末までにひとつ「自分の要件に合わせて挙動を変える」改造を加えることだ。組み立てる感覚はそこで動き出す。
筆者の体験から
フロントエンドを本格的に触り始めた頃、既存のコードにvarとlet/const、function式とアロー関数が混在していて、どれが標準なのか整理できていなかった。先輩の書き方を真似ても理由を説明できず、レビューで詰まり、ES2015以降の書き方に絞って整理したくて本書を読むことにした。
「変数」の章でスコープの違いを理解してからは、古いコードでvarを見つけたらlet/constへ置き換える基準を持てた。分割代入やスプレッド構文は、APIレスポンスから必要な値だけ取り出す処理でそのまま使えている。
うまくいかないこともあった。サンプルを写す進め方は、途中から「写すだけで終わっている」感覚になっていた。組み合わせを自分で考える工程を挟まないと身につかないと後で気づいた。
若手のプルリクエストでobj.a、obj.bと一つずつ取り出す書き方を見つけ、スコープと分割代入の話を引き合いにconst { a, b } = objへの書き換えを提案した。読んだ内容をレビューの根拠にできたのは、嬉しい出来事だった。
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